【漫画レビュー】葬送のフリーレン 2巻

魔王を倒した勇者一行の“その後”、エルフの魔法使いが紡ぐ人を知る物語

●漫画家

原作:山田鐘人

作画:アベツカサ

2巻(10話分掲載) 2020年10月16日発売 

・掲載誌: 週刊少年サンデー、サンデーうぇぶりにて連載中(2020年10月現在)

(以下、漫画の内容やネタバレ要素しかないので注意)

●あらすじ

魔王を倒した勇者一行の魔法使い・フリーレン。彼女はエルフで長生き。勇者・ヒンメルの死に何故自分がこんなにも悲しむのかわからず、人を“知る”旅に出る。僧侶・ハイターが育てていた少女・フェルンを、ハイターの葬送と共に仲間に加え、魔法使いの二人旅へ…(サンデーうぇぶりより引用)

・第2巻の各話のタイトル

第8話百分の一(ひゃくぶんのいち)
第9話死者の幻影(ししゃのげんえい)
第10話紅鏡竜(こうきょうりゅう)
第11話村の英雄(むらのえいゆう)
第12話北方の関所(ほっぽうのせきしょ)
第13話解放祭(かいほうさい)
第14話言葉を話す魔物(ことばをはなすまもの)
第15話ドラート
第16話衛兵殺し(えいへいごろし)
第17話葬送のフリーレン(そうそうのふりーれん)

目次

葬送のフリーレンの人物相関図(2巻)

(※2巻の内容を元につくっています。転載はご遠慮ください。クリックで拡大表示)

●主要 新キャラクター

・アイゼンの弟子 シュタルク

・大魔族七崩賢の一人 断頭台のアウラ

・配下 リュグナー

・配下 リーニエ

・配下 ドラート

各話のあらすじと見どころ

・第8話 百分の一

あらすじ

アイゼンは、フリーレンに大魔法使いフランメの手記にある「魂の眠る地(オレオール)」を探してヒンメルともう一度話すんだという。フリーレンとフェルンは、その地があるという大陸の最北端である魔王城のあるエンデに向かうことになった。

勇者一行で半世紀流星をみた夜、アイゼンはフリーレンに弟子を取ることについて聞いたことがあった。当時フリーレンは、勇者一行との冒険についても人生の百分の一にも満たない、弟子を取ったところで死んじゃうから時間の無駄と答えたのであった。

見どころ

・フェルンの膝枕で空寝しているともみえるフリーレンの寝姿

・アイゼンとフリーレンのやり取りをヒンメルが黙って聞いている右上コマの作画

・第1話と同様なアイゼンとの別れ(同じ巻の1話となっている)。その次のページが増えて、フェルンとのやり取りになっている

・第9話 死者の幻影

あらすじ

勇者ヒンメル死から28年後、アイゼンと別れたフリーレンとフェルンは北の大地エンデに向かうために、中央諸国ヴィレ地方にいた。峠道を越えるなら幽霊が出て行方不明者が何人も出ているから止めたほうがいい、と村人に助言を受ける。フリーレンはその幽霊に心当たりがあるという。峠道を越えるために、フリーレンとフェルンはその幽霊と対峙することとなった。

どころ

・ハイターの幻影をみたフェルン

・ヒンメルの撃て

・幻影鬼のモンスターデザイン

・第10話 紅鏡竜

あらすじ

勇者ヒンメルの死から28年後、フリーレンとフェルンは中央諸国リーゲル峡谷にて紅鏡竜から魔導書を奪おうとフェルンが魔法を放つがとどめを刺せずに敗走する。リーゲル峡谷にアイゼンから俺の弟子がいると聞いていたフリーレンは、前衛である戦士のシュタルクを仲間に入れることを決めたのであった。

どころ

・大きくえぐられた岩壁を背景に子どもに話すシュタルク

・フェルンの見下し顔

・修行のあと

・第11話 村の英雄

あらすじ

紅鏡竜から村を守る英雄として慕われるシュタルクは戦闘経験ゼロの戦士だった。フェルンは戦闘に必要なものは覚悟だとシュタルクに助言する。翌日シュタルクは、紅鏡竜との戦闘はフリーレンとフェルンに足止めは30秒でいいんだなと念を押す。紅鏡竜と向き合ったシュタルクの強さとは。

どころ

・アイゼンがシュタルクを殴った本当の理由

・シュタルクの斧の一撃

・ヒンメルが話すくだらない旅

・第12話 北方の関所

あらすじ

勇者ヒンメルの死から28年後、戦士シュタルクを仲間に加えたフリーレン一行は中央諸国リーゲル峡谷にある城塞都市ヴァールの関所にいた。北側諸国の魔物の動きが活発で現在関所の通行が認められていないという。町では関所が開くのは早くても2年後だと噂されていた。

どころ

・ジャンボベリースペシャルの話

・アイゼンの饒舌

・シュタルクの恩返しの話

・第13話 解放祭

あらすじ

勇者ヒンメルの死から28年後、フリーレン一行は北側諸国エング街道にて、土砂崩れを片付ける頼まれ事を解決していた。依頼者はお礼として町まで案内するといった。今夜はその町で解放祭があるという。かつて、その地域を支配していた魔族を討伐したのは勇者一行なのであった。

どころ

・早起きのフリーレン

・人間は大袈裟だね。なんでもかんでも祭りにしたがる

・飾り付けられた勇者一行の像

・1巻と同じ話数で祭り(1巻では新年祭)

・第14話 言葉を話す魔物

あらすじ

勇者ヒンメルの死から28年後、フリーレン一行は北側諸国グラナト伯爵領にいた。魔族が街中を歩いているのをみたフリーレンは、攻撃態勢に入ったことで衛兵に取り押さえられ地下牢に拘束される。その魔族はリュグナーという名で、和睦の使者だという。グラナト卿は、魔王直下の大魔族七崩賢の一人であるアウラの和睦の申し出を承諾するか迷っていた。

どころ

・大魔法使いフランメから継承されているフリーレンの魔族に対する定義

・勇者一行と魔族の話

・わかり合うための言葉ではなく、欺くための言葉

・第15話 ドラート

あらすじ

リュグナーは、グラナト卿に和睦と称し、うまい言葉で懐柔させて街全体の防護結界を解除させることを企んでいた。一方、そのリュグナーに攻撃態勢をみせたことで、地下牢に閉じ込められたフリーレン。アウラの配下の一人であるドラートがフリーレンを殺そうと迫っていた。

どころ

・リュグナーの言葉使い

・フリーレンとドラートとの戦闘シーン、魔族に容赦のないフリーレン

・第16話 衛兵殺し

あらすじ

街ではフェルンとシュタルクがグラナト卿にフリーレンを釈放してもらって魔族を討伐してもらおうと話し合っていた。屋敷では、グラナト卿が地下牢に閉じ込めた魔法使いが脱獄し衛兵が殺されていることをリュグナーに問い詰めるのであった。一方脱獄したフリーレンは、フェルンとシュタルクと合流するが、魔族はフェルン達で倒せばいいと突き放すのであった。

どころ

・シュタルクのリュグナーに対する印象

・魔力探知の得意なリーニエ

・リュグナーの戦闘方法

・第17話 葬送のフリーレン

あらすじ

フェルンとシュタルクはリュグナー一味を倒すために、グラナト卿の屋敷に戻ってきた。彼は街の防護結界を解除するようにリュグナーとリーニエに拷問を受けていた。グラナト卿を助けだそうとしたシュタルクだったが、リュグナーとリーニエに見つかってしまう。一方フリーレンは、大魔族七崩賢である断頭台アウラと衝突しようとしていた。

どころ

・一般攻撃魔法ゾルトラーク

・面影のある所作、フェルンとフリーレンのシーン

・タイトル伏線回収

まどいレビュー

というわけで、遅くなりましたが2巻のレビューです。

1巻のレビューでは、この漫画は2020年でいちばんオススメしたいと明言しましたが、現状も同様の考えです。このままいけば確実にサンデーの看板漫画になるともいいましたが、週サンはかかさず読んでいますが毎週上位に掲載されているので人気は獲得していると思われます。

2巻では、1巻のレビューでいったように前衛の戦士が仲間に入りました。レビューで予想した僧侶についても連載では結果が出ていますが、今回の巻では触れられないので次巻以降ということになりますね。

2巻では、はじめて会話ができる人型の魔族との1話完結でないストーリーが後半畳みかけるように進んでいきます。

そして、“葬送のフリーレン”というタイトルを回収する、圧巻のラストが待っています。

おもしろさしかありません。

これらの物語と演出、それを実現させる作画を週刊ペースで実現していることは、ただただ感服します。毎週本当に楽しみですね。

会話のないコマでみせる技術は、1巻同様に遠景シーンを多用して(時間の流れを遅くする効果)、物語に読者が入りやすいように見事に演出しています。

この技術は、葬送のフリーレンという漫画の代名詞とすでになっているといえるでしょう。

漫画家も編集も当然理解して狙ってやっています。

昨今の漫画は情報誌のような空白が一切ないもので溢れかえっていますからね。これに関しては、ワンピースの影響もかなりあると思うんですが。空白の技術は、センスが相当問われますから難しいですよね。もちろんその漫画の種類によっても大きく変わってくると思いますが。

勇者一行とフリーレン一行とのダブルストーリーラインである漫画の定型はできあがっているので、あとはどういう風に物語をイレギュラーに展開していくかが重要になってきます。

ここで問題になるのが人気に対して、無難にまとめていくか、思い切って賭けに出るかですね。

これは漫画家や編集者の考え方にもよっても大きく左右されると思いますが、今回の2巻では確実に勝負にいったと思っています。

フリーレン一行と人型魔族との戦闘は、今後衝突することは確実ともいえましたが、一発目の戦闘から思い切ってタイトル回収にきたのは気合が感じられました。

早くもきたかって、正直度肝を抜かされました。

“葬送”って馴染みのない熟語をタイトルに入れることを承諾した編集者も相当自信があったのではないでしょうか。(タイトルは編集者といっしょに考えたかもしれないけど。原作一人で考えたなら、センスの塊です)

ここでタイトルについて話を少ししましょう。

「の」の法則は、ジブリのタイトルで有名です。

簡単に説明すれば、となり「の」トトロ、魔女「の」宅急便、千と千尋「の」神隠しなど、タイトルに「の」を入れたものはヒットしやすいという法則。もののけ姫は「の」が2つあるじゃないかってね。

語感というものがありますが、例えば歌手でもサザンオールスターズは語感に重点をおいて拗音をよくキーワードとして入れて曲をつくっていることは有名ですよね。話が脱線しました。

もちろんこれらは誰でも知っている話だから、漫画においてもそれにあやかろうとタイトルを考える場合もあるでしょう。

最近の人気漫画で例をあげるなら、鬼滅「の」刃ですね。

とはいっても、「葬送のフリーレン」というタイトルを漫画の内容を一切知らない人が聞いたら、非常に想像しづらいでしょう。ゾンビやホラー漫画を想像する人も多いんじゃないでしょうか。

しかも、週サンという少年誌で、少年がまず葬送の意味を理解している人はどれだけいるのだろうと。そういう意味でもよくこのタイトルで進めたのは自信があったという裏付けとも想像できます。

読者層は、大学生から社会人の男性に人気があるのではないかと踏んでいます。

上記でも述べましたが1巻では1話完結型の物語が多かったですが、2巻ではバトルシーンが継続する疾走感が味わえます。

人型魔族との戦闘は3巻に続いているので、そのおもしろさは3巻でも確約されています。

今後は、1巻で予想した僧侶についてと、人型魔族とのこれまでに類がない衝突の切り口をどうみせるかがカギになると思っています。

すでに定型はできあがっており、一定の人気は確保できているのでどう進めていくか非常に難しい局面とも言えますね。

ある程度定型の完結型のストーリーをはさみながら、2巻でみせた人型魔族との疾走感ある展開で読者に刺激を与えるというのが現状ではベストでしょうか。

大魔族七崩賢と今回謳ったように、残りの魔族も気になるところですね。

いずれにしても、毎週楽しみで仕方がない漫画であることはいうまでもありません。

というわけで1巻同様に、また長文でのたまってきましたが、ここまで妄想考察にお付き合いありがとうございました。

もしあなた自身が電子書籍と単行本をまだ購入していないようでしたら、ぜひ買って読んでみて事実を確かめてみてください。(サンデーうぇぶりで試し読みもできます)

電子書籍と単行本について

まどいは当然両方買っていますが、やはり当然両方買うべきでしょう。

以下、電子書籍と単行本の違いをのせておきます。

・第9話死者の幻影の扉が電子書籍版はカラー、単行本は表紙裏の折り返しにカラーとして掲載

・第11話の村の英雄の扉と1ページ目が電子書籍版はカラー、単行本は裏表紙の折り返しにカラーとして掲載

・第12話の北方の関所の1ページ目と見開きの扉が電子書籍版はカラー、単行本は裏表紙でカラーとして掲載

・第17話葬送のフリーレンの扉がカラー(この回はタイトル文字がないのがいいよね)、単行本はモノクロ

『葬送のフリーレン』第3巻 2020年12月18日発売予定

第3巻に関しては、2020年12月18日発売予定ですので楽しみですね。

もうすぐですw

ということで、今回は『葬送のフリーレン』第2巻のレビューでした。

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